のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

 とびお、シャコバサボテンを食す

おとといは、あまりにショックなことがあり、日記の更新を忘れてしまった。
(責任転嫁)

その日の夜は、ピエモンテにある何とか料理学校の校長先生がやってきて、本場の
北イタリア料理を作ってくれるという、ラ・フランチェスカピエモンテフェア
のディナーをいただく、という予定があったので、いそいそと家に帰った。


昼間、掃除をして家を出たので、いつになく、リビングはさっぱりすっきり
しているはずだった。ところが、じゅうたんの真ん中は、20cmぐらいの
泥ナメクジが這ったあとのようなS字型の土のあとで汚れていた。
ところどころに緑とピンクのスポットがあった、その泥の道の終わりには、
白い植木鉢と土の塊が転がっていた。
土の塊は、シャコバサボテンの根っこを覆っていて、緑の多肉植物
綺麗さっぱり姿を消していた。


トビーが食べたのだ。


「とびー!」


どすをきかせた低い声でトビーをにらみつけると、それまでのはしゃぎっぷりから
一変し、トビーはすごすご机の下に隠れこんだ。


「とびー、これ、どうしたの!?」


トビーは、鼻先に突きつけられた空っぽの植木鉢から目をそむけるように
横を見ている。


草丈15cmはあったシャコバサボテンは、根元まで綺麗さっぱり
食べつくされていた。
かたやトビーの体高は、せいぜい20cmくらい。
身長156cmのわたしにとって120cmぐらいの巨大な草むらを食べつくしたに
等しい。
ピンクのつぼみが日々落ちていきながらも、まだ、ちっこい
希望が残されていたシャコバサボテン。
失われちまった悲しみに、
とか、中也記念館を近所に持つものらしい一言を心で呟いてみなりしながらも、
トビーをしからなければ、という義務感で、わたしはプンプン怒り続けた。


それにしても、
慢性的なひもじさがそうさせたのか(でも、えさは十分あたえております)、
過去、トビーの過剰な食欲をごまかすためににんじんやキャベツやピーマンを
与えられていたときのささやかな幸せの記憶がそうさせたのか、
それとも、納豆でもご飯でも机の上からかっぱらい、なんでも食べつくす
食欲大魔神なやつだということなのか。
いろいろと考えながらも、シャコバサボテン一鉢全てを食べつくしたと
いうことがなかなか信じられなかったわたしは、シャコバサボテンが
落ちていないかと部屋のあちこちを探したが、それはどこにも見つからなかった。
きっと、あんなものを食べれば、きっと、吐くか、下痢をするかするに
決まっている。
ディナーに出かけているあいだ、部屋が緑色に汚れているかも知れない。
その心配は、シャコバサボテンを失ったことよりもわたしの心を憂鬱にした。
ディナーのあいだも、シャコバサボテン完食事件は語り続けられ、
げろの心配は続けられた。
ポルチーニ茸のリゾットが出されたときも、
白ねぎのスフレも牛ヒレ肉のブラウンソースも、(まぁまぁ)美味しかったが、
トビーが緑まみれになっていないか心配だった。


帰ると、部屋は綺麗だった。
トビーは、いつもより多く、甘えてくるようだった。
そして、その夜と翌朝、トビーはとても大きなウンチをした。


シャコバサボテンは、意外にも、犬の健康によいのかもしれない。
そう思った瞬間だった。