のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

乾いた土地

 白茶けた乾いた大地がどこまでも続く。
「今年は雨が少なかったからな」
 強い日差しをあび続けた皴だらけの顔で男は言った。乾いた土の上に生える緑の草は、まだ小さく、男の不精ひげよりもまばらにみえる。
「今年は、種付けを増やさなかった。これだけ乾いてちゃ、この先の畑なんざ、無駄に枯らして骨折り損になるだけだから」
畑と呼ばれる石ころだらけの乾燥した土地を前に、男は本当はもう少し作付けを増やしておくべきだったと後悔している。
 ミャンマーにおけるアヘンの昨年のキロ当たり買い取り価格は130ドルから234ドルにはねあがった。作付けが減った今年は、さらに高値で取引されるに違いない。
 もっとも、流通価格の上昇が、かれら農民に還元される割合は極めて少ない。価格の高騰があったとしても、全体的な生産量や適正価格を知るすべは無く、売り惜しみをして交渉価格を吊り上げる選択の余地は彼らに与えられていないのだ。
 一つの集落に、一人の仲買人がやってくる。仲買人は、相応の時期になるとどこからとも無く現れて、買い付けの量と値段を決定する。彼に売らなければ、隣の集落に買い手を捜しに行かなければならない。けれど、それは別の集落の販売ルートをかき乱すことになり、あたりに住む農民の誰からも歓迎されない。


 黄金の三角地帯を形成するミャンマーでの、昨年のケシの作付面積は、今年推定4万4200ヘクタールで、昨年より29%減少した。ピークだった93年の実に7割以上も減っている。生産されるアヘンは370トンと推定され、昨年より54%、ピークの98年より72%減っている。ラオスも似た状況で、作付面積は6600へクタールで昨年より45%減、アヘン生産も64%減の43トンと推定されている。一方、アヘン生産量世界一のアフガニスタンは昨年の3600トンからさらに増えると予想され、2位のミャンマーとの差は拡大している。


 乾燥に耐え、旱魃のときにこそ農民を救う換金植物であるケシは、覚せい剤として多くが退廃した先進国へ輸出されている。人々が、体を蝕む幻想を買うために払った額の0.何パーセントかは、アフガニスタンの農民を支えている。でも、利益のほとんどは、違法で悪辣な麻薬組織を支えていてる。べつに、自分の精神や健康を危険にさらさなくても、同じように貧しい農民を支える手段はあるのだが。