のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

 木は何本あると並木になるのか

家のそばに、トラックの中古車屋がある。胸を張ってトラックの素人を名乗れる私には、どれもみんな同じ白トラックに見える。でも、フロントグラスに立てかけられた値札を見ると、様々なモノの中でも最も大きな数字で表示される値段とともに、その車の詳細には微妙な違いがあることがわかる。年式が異なっていたり、エアコンがついていたりいなかったり、DVDが見れたり見れなかったり。
でも、ぱっと見、だだっ広い場所に整然と並べられた何十台ものトラックは、ほとんど同じサイズ、同じ色で、同じ方を向いており、同じように座席は空っぽだ。多少、台数が変わっていてもわからない。画一的で、変化がない。その中古車屋の脇を、私は毎日犬と散歩しながら通り過ぎている。


それでも何も興味深いところのない中古車屋で、いつも一つだけ気になっているものがあった。それは、敷地の隅にある小さな事務所の横に生えている4本のやしの木だ。そのやしの木は、LAのサンタモニカブルヴァードの両脇に生えているのぐらい大きい。澄んだ青空を背景に等間隔に並んだ4本だけうまく切り取れば、ハワイだよ、といっても通じてしまいそうなきちんとしたやしの木だ。けれど、道路から見るやしの木は、あまりに唐突で、まったく背景とマッチしていない。あたりの無味乾燥とした景色からは、四本の煙突のほうがしっくりきそうなぐらいなのに、それでも、そのやしの木が生えたところだけ見れば、並木の様相は呈している。


一本だったら、たぶん電柱にしか見えない。
二本だったら、大きすぎる門柱だろうか。
三本なら、手持ち無沙汰な背高のっぽの怪物がいるみたいで落ち着かないだろう。
でも、四本なら?
ほんの少し、やしの並木、を思い起こさせる。
四本集まれば、集団としてのアピール力とでもいうものがでてくるらしい。

あの四本は、以前もっとたくさんあった並木の末裔なのか。
それとも、これから木が増えていく前の並木の始まりなのか。
見るたびに気になってくる。
てっぺんに茂った葉が髪振り乱したスリムな巨人みたいなやしの木は、今日も画一的トラック列の背後にそびえている。