のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

エリック・ホッファー自伝―構想された真実
数日前から、このような本を読んでいる。


ずっと私の本棚で眠り続けていたこの本を、今日になって手に取ったのは、「偶然」なんだろうか?


エリックは、7歳のときに失明し、15歳になり視力を取り戻し、18歳に天涯孤独の身となる。
それから、生き延びる術として働くことを覚え、しばらくすると仕事をやめる。
長い休暇が終わったとき、以前のようにまた食べていくために金を稼がなければならない
人生に戻ることを思い、28歳の彼は自殺を試みる。


シュウ酸での自殺に失敗する過程で、彼の心に生まれたのは、
一本の道としての人生、
どこへ行くのか何をもたらすのかも分からない、
曲がりくねった終わりのない道としての人生、
という考えだった。
その考えは、そのまま彼の放浪生活の始まりになった。


目的地のない道を歩き始めた彼を、偶然車に乗せてくれた
ドライバーの口から、エリックはある言葉を聞く。
ゲーテの言葉を引いたという言葉はこうだ。
「希望は失われ、すべてが失われた。生まれてこないほうが良かった。」


エリックは、もしもその言葉を本当にゲーテが言ったとしたら、そのとき
ゲーテはまだ小者だったのだ、と言う。
親切なドライバーがおろしてくれたアナハイムの町で、真っ先に図書館に
向かった彼は、そこでやはり運転手の言葉が間違っていたことを発見する。


ゲーテは「希望」ではなく、「勇気」が失われたといったのだ。


エリックは、そのままその町で仕事を見つけ、かの運転手と再会し、
あの言葉が間違いだったと告げる。
けれど、運転手は「希望」と「勇気は」同じものだという。
エリックは、そこにどんなに大きな違いがあるかを語る。
そして、以下は本書からの引用である。


自己欺瞞なくして希望はないが、勇気は理性的であるがままに物を見る。
希望は損なわれやすいが、勇気の寿命は長い。
希望に胸を膨らませて困難なことに取り掛かるのはたやすいが、
それをやり遂げるには勇気がいる。
・・・・
絶望的な状況を勇気によって克服するとき、人間は最高の存在になるのである。』


数日前から、よく晴れた夜空に月が見える。
部屋の電気を消しベランダに出ると、育てているハーブの葉が風に揺れていた。
その姿は青白い月明かりを浴びて、冷たい光を放っている。
無数の虫の音が、地面から湧き上がり、透き通った夜空にこだまする。
今日と言う日に、その言葉に触れることができて、良かったと思った。