お出かけ先は、代々木のとある大きな公的施設。
そこは昔、数日住んだことがあり(研修で)、講演をしたこともある、
馴染み深い場所で、本日はそこの利用者登録をしに行った。
私はいつも、こういう公的機関の登録受付の人々の説明にありがちな、
規則重視の事務的な鎧を着たような口調というのに、
なぜか一抹の切なさを感じる。
それを振り払いたくて、
うつむいたまま机の上の利用案内に向かって話し続ける受付の女性が、
最後になってようやくこちらを見た瞬間、
その視線を捕らえて、にっこり笑いかけながらお礼を言うと、
彼女は、本来の自然な笑顔を見せてくれた。
ほっとした気分で、私は参宮門から代々木公園へ歩いていく。
真ん中の芝生のまわりに、大きく枝を広げた桜の木が、
ピンク色の綿菓子みたいな姿で点在している。
近くによると、すぐ手に届く場所で、花々の塊が風にゆれる。
そっと手を伸ばして、握手で挨拶を交わす。
親しくなったところで、ずんずん近づいて幹に両手を触れる。
両手を触れた私の中に、
何かが流れ込んでくるのが分かって、
なんだかとても嬉しい気分になり、
こんなに綺麗でいてくれてありがとう、
こんなに大きく広がりながら存在してくれていてありがとう、
と、桜の大木にお礼を言った。
公園の散歩はまだ肌寒く、
芝生は半分枯れ草色で、
向こうが透けて見える大木の世界は冬のモノトーンみたいだけれど、
それでも突然日差しが降り注ぐと、辺りは生き生きと輝きだし、
高々と空に舞う噴水も、
小さな葉っぱが芽生え始めたバラ園も、鮮やかな色を取り戻す。
強い風が吹く花冷えの今日のできごと。