のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

信号が変わるまで・・・

夜になって、トビーの散歩に出た。
家の近くの小さな交差点で、私とトビーは立ち止まった。


車が全く通らない空っぽの道の、
闇の中で光るアスファルトを前に信号を待っていると、
時折、家路を急ぐ人が道路の向こう側を通過していく。
この小さな道は、渡ろうと思えばいつでもどこでも渡れるのだ。
けれど私は、とくに急ぐでもなく、
ただ信号が変わるのを待っていた。


あまりに長いこと信号が変わらなくて、
そして幾人もの人が目の前を通り過ぎていくのが気になって、
ようやく私は、信号機の横の押しボタンを発見した。


『みんなと違う方向に行くためには、
自分でボタンを押さなければならない』
そんな教訓めいたことを思いつつ、ボタンを押す。


そして私は待ち続けたけれど、それでもしばらく信号は変わらなかった。
業を煮やして再び押しボタンを見ると、表示は変わっていなかった。
押したはずのボタンは、押されていなかったのだ。
私は、もう一度、今度は前よりも強くボタンを押し、
「お待ちください」の表示が出るのを確かめた。


力を込めてボタンを押すと、すぐさま車道の信号が変わり、
歩行者用の信号も青に変わった。


歩き出した私の背後に、同じく道を渡る人がいた。
あれだけ長いこと一人で待っていたときには、誰も私と
同じ方向に行こうとする人はいなかったのに。
信号が変わった途端、そちらに行こうとする人が現れるとは不思議なことだ。


そして私は、夜道を歩き続ける。
愛らしい四足の獣をお供に。
私たちの向かう場所へ、
私たちは歩いていく。