のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

月の浄化

駅からの夜道を歩きながら、街頭に照らされた木々を見た。
もしも、この情景を絵に描くとしたら、
闇の中に沈む木々には、黒い絵の具を使うだろう。
本来の色を失った幹も葉も、ただ黒く塗りつぶすだろう。
けれどその横に一条の光が差し込むなら、そこだけ元の緑色の葉が浮かび上がる。
黒々としたシルエットの中に、本来の緑色の葉が見える。


光は、闇の中に失われた色と形を呼び戻す。
闇の中でも変わらずにあり続けるはずの、
そのものの形と色を、私たちに教えてくれる。


ただ、光がまぶし過ぎると、
何もかも見えることが息苦しくなる。
そこから眼を背けたくなる。


闇の中の光は、だからとてもやさしい。
月明かりはだから、とても心地よい。


今日はなぜか、とても疲れていて、
帰りの電車では、自分の中に染み入ってくる沢山の情景や音をこそぎ落としていった。
ちょうど重たい粘土の型から本体を取り出すように、
見聞きした声や表情や思いを、体からはがしていった。
そして、月明かりの下にその体を横たえた。
横には透明な水晶の柱を置いて、ともに青い月の光に洗われた。
一筋の曇りも無い透明な水晶の隣で、
自分もどんどん透明になっていった。