のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

糖度13度線の攻防

それは、スイカの物語。


私は、スイカ好きな家長が君臨する家で育った。
正確には、スイカという一点において権限が肥大化する家長が君臨する家、
ということである。


簡単にいうと、家の父はスイカが大好き。
イカ好きのスイカ大王。
そして、私の実家には、夏中かならず、
か・な・ら・ず、丸ごとのスイカが常備されていた。
丸ごとのスイカに包丁を入れれば、それはその時点で丸ごとではなくなるので、
必然的に、スイカはひとつよりは多く、常にあった、ということになる。


しかも、我が家におけるスイカシーズンは、ほとんど市場にスイカが出荷される
期間と同じだった。
これまた簡単に言うと、まだ春先、またはもう冬が近くて値段がとても高くても、
イカが売られていれば必ず買う、のである。
売られたケンカは必ず買う、のと同じ意気込みである。(違うか)


そんな私が結婚した相手は、
イカ嫌いだった。
自分の父親は、女性にとっての初めての異性体験であるというフロイトの説によると、
どこかしら自分の父親に似た存在に惹かれるということになっているが、こと、私の
イカ問題に関しては、すこしねじれた深層意識が働いたのであろうか?
いや、そんなことはどうでもいいが、とにかく、スイカ嫌いの人との家庭では、
当然ながらスイカが常備されることはない。
それどころか、しばらくの間、私はとてもとてもスイカから遠ざかる日々が続いた。


けれど、三つ子の魂百までも、というか、
もしかしたら、三つ子の魂は百のときこそ、
よみがえってくるのかもしれない。


最近、とみにスイカが恋しいのである。


幸か不幸か、夫は目下遠い空の下。
大きな丸ごとスイカを買う勇気はないけれど、日々、カットされたスイカのパックを
購入している毎日である。


ところで、私の家の近くのスーパーでは、このカットされたスイカに、糖度が表示
してある。おおむね、11度と言う表示が多いが、ときどき12度というのも目にする。
それらを、スーパーは分け隔てなく、同じ値段で売っている。


11度と12度があったら、そりゃー、12度買っちゃうでしょう。
残った11度の立場はどうするのよ。
売れ残るのじゃぁないかしら?


私は、そんな素人的感想を抱きながら観察していたが、夜遅くにいけば、当然のように
そこには糖度11度のスイカしかない。
12と比較すればそれは12を取るけれど、ほかに選択肢がなければ別に気にならない、
というものである。
私は、そこに残されていた糖度11度のスイカをかごに入れた。


だがその翌日、比較的早い時間にスーパーに足を運んだ私は、例のスイカの切り身
売り場で、衝撃的な事実を目の当たりにする。
そこには、糖度13度と11度のスイカが並んでいたのだ。


がーん。11と12度ならまだしかたないか、と思えるけれど、じ、じゅうさんど?
一体、11度と13度を並べられて、喜んで11度を買っていくお客がどれほどいるものだろう?
(最近のみかんは甘すぎる!と激昂するうちの姉ならいざしらず)


私は、13度のスイカが食べてみたかった。
けれど、家にはまだ11度君が残っている。
うううむ。。。
考えた挙句、私は、別の日に、13度を獲得することを心に誓った。


そして、今日、私は意気揚々とスーパーを訪れた。
家の空っぽの冷蔵庫は、もろ手を挙げて、13度くんの来訪を待ち受けている。
私は、いつものとおり真っ先にスイカ売り場に向かい、そして、
そして・・・。


そこには、13度くんはいなかった。
12度くんもいなかった。
いるのは、11度くん、11度くん、11度くん、そしてまた、11度くん。


一期一会、と言う言葉が私の脳裏を掠めた瞬間だった。。。