のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

結果的にウソつきました

私は現在、渋谷でバイトをしているのですが、今日は渋谷駅前一斉
交通量調査の日らしく、8人ぐらいのカウンターを持った交通量調査員
を目撃。
そのうちの一人は、目の前に10連×5ぐらい、つまりは50個ぐらいの
カウンターを並べていた。
一人で、あんなに多数のカウンターを操れるんだろうか?
エレクトーンの上鍵盤まるごとぐらいの数ですよ?


と、感動しながら駅への道を急いでいたら、南口の直前で
ラミネート加工された地図を持った男の人に引き止められた。
「すみません、交通量調査なんですけど、ほんの少しだけご協力ねがえませんか?」
早口で言う、その切羽詰った様子に、私は思わず憐れを催してしまった。


駅前を行過ぎる人々はみな、他人へのとがった警戒感を
あらわにして行き過ぎる。
多すぎる通行人に加え、あちこちに散在するティッシュ配りや情報誌配りや
チラシ配りから逃れようと、誰もが互いによそよそしい。
そこは、ちょっとでも肩をぶつけたりしたらその後5分は嫌な気持ちでいっぱいに
なる場所だということを人々は知っている。
夕方五時。
夕闇に包まれた街は、穏やかなゆとりとは程遠い時間に入ろうとしていた。


その人は、忙しい通行人を捕まえたら、できるだけ早く要件を終わらせなければならない、
そんな、少し切なくなるほどの焦りがありありと分かる早口で聞いた。
その早口は、もしかしたら今日一日、ここにたって通行人に語りかけ続けることで、
否応なしに会得した話し方なのかもしれない。
もしかしたらそれは、ちょっと歯噛みしたくなるようないくつかの出来事によってさらに磨きがかけられたものかもしれない。
彼は私に、
どっちの方向から来たか、
そして、どの改札から入るか、
そして、どの電車に乗るか。
無駄のない語り口で矢継ぎ早に尋ねる。
私は、ハキハキと、自分の来た方向と、通る予定の改札をつげ、
埼京線にのります」
と、にっこり笑いながら明快に応えた。


質問ノルマをクリアしたお兄さんの口元が、ほんの少し和らいだような気がした。
それを見た私は、なんだかとても清清しい気持ちになった。


師走の足音まじかの慌しいこの都会で、
少しでもあの交通量調査の人の疲れが軽くなったらいいな、
そんな風に思いながら、改札を通り過ぎた。


通り過ぎたところで、はた、と気づいた。
次の埼京線まで、しばらく間が開いていますぞ。
私は、山手線に乗ることを即決。
しまりかけた電車に飛び乗った。


えっとー、結果的にうそつきました。
交通量調査のお兄さん、ごめんなさい。
でもいっか。
早く終わって、お家で一服できるとよいね。


この街はこれから、さらに輝きを増し、慌しさを増していくようです。