昨日はぐっと気温が上がり、突然初夏が来たみたいな一日だった。近所のソメイヨシノは、ほんの2,3日前まで花が残っていたのに、とつぜんの夏の訪れに押しのけられるようにして葉桜にかわった。
けれど、近所の公園では次は私の番とばかりに、シャクヤクやボタンザクラが咲き誇っている。
写真の背景にあるのは、じつはこれも遅れて咲くサクラの一種。私の好きな緑の桜、うこんざくら、だ。
夜、仕事を終えて家に帰ってきたとき、この薄緑色の花びらが、街灯の光を受けて闇に浮かび上がっているのをみると、ふぅーっと体の力が抜けていく感じがするのが好きで、この季節は、ほんの少しだけ遠回りをして帰るのだ。
ソメイヨシノが咲き始めると、街中をあちこちがピンク色に染まる。なので、春を彩るサクラと言えばソメイヨシノが代表に違いないのだけれど、そしてそれを否定するつもりも全然ないけど、私は一番メジャーな主役よりも、なんとなく毛色が変わった個性派の方が好き。これは私の性格ゆえなのだろうか。
緑色のサクラがある、と聞いた瞬間に、桜と言えばピンク(か白)と思っていた自分の常識を覆す存在にぜひ会いたいと思い、多摩森林科学園の桜保存林に出かけて行ったのを思い出す。実際に行ってみると、お目当ての御衣黄(ギョイコウ)も右近桜も、まだまだ堅いつぼみだった。
でもそこには実に多くの種類の桜があって、よのなかにはいろんなヒトがいるんだなぁと思ったのだった。
勝手に何かを象徴化して崇拝できるのは、人間の能力のひとつだけれど、自然はいつもそうした呪縛から解放してくれる、絶対的な安定感があるね。
どんな花も、ただただ美しい。