のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

AIは、人間の進化の道具になるか

今日、NHKスペシャルの再放送で「AIに聞いてみた
どうすんのよ!?ニッポン 」を見た。大変に面白かった。

 以前から、AIには興味を持っていろいろ記事を読んできていたけれど、NHKの番組をきっかけに少しAIへの見方が少し変わってきたように思う。というのは、世間に流布されているAI脅威論が最初は煽られていたところが大きかったけれど、最近は、上手く活用することで得られるメリットのほうに目が向いてきたのだ。
 藤井棋士の特集で、羽生さんがAIによって未知の将棋の地平が見えてくるというような意見が、今回の番組でも前面に出されているのだ。今回、NHKで独自に製作したAIの提言を前・後編の2時間番組にまとめているけれど、ここで得られた新たな知見やヒントは、もっともっと膨大で、そこからいくつもの興味深いものが見えてきているに違いない。今回選ばれた提言を少し見るだけでも、その奥深さが良く分かった。

 とくに今回の番組で提示されていた「40代の1人暮らしが日本をつぶす」という提言は、何だか私自身も他人事ではいられない気になった。そもそも、これは提言というより、意図性を全く持たないAIからすれば、客観的な観察結果、ということになる。膨大な過去の様々な白書や調査や統計データなどをインプットして、個々の要素の関連性を抽出しただけなので、どっちが結果でどっちが原因かなどの因果関係は全く明らかではない。ただ、時系列データでもあるので、これまで1人暮らしの40代が増えたのと同時に、日本が滅ぶようなさまざまな指数が変化している、ということを言っている。

 この一方で、40代1人暮らしが減るような変化をもたらすことができれば、それは日本の発展にもつながる、と言えそうだ。そのうえで、AIは、40代1人暮らしが減る対策法も提示してくれている。それは、住居の家賃の坪単価を1000円下げるというもの。
 まぁこれは、40代1人暮らしの人たちがどんな人なのか、というタイプ分けを行ったうえで検討している。つまり、一定の割合(3,40%ぐらい)の人々が経済的に困窮しているというところから、余裕ができればその分1人暮らしを脱却する方向に動くでしょう、ということだ。
 しかし一方では、仕事バリバリで楽しい40代1人暮らしも多い。男性で38%、女性で55%は、そもそも自分の暮らしに満足していて、結婚などもあまり考えていないタイプ。そこで、最後にAIが提示した、40代1人暮らしの人々が幸せになるためのアドバイス(?)は、
「仕事を面白がるな」であった。

 ある種、キャリアカウンセリングの一角を突き崩すような意見に、感心してしまった。
 そもそも、仕事が大事、とか、仕事の成功が人生の成功、みたいな考え自体が、国家を揺るがせているかもしれない、なんて、素晴らしい逆転の発想じゃないだろうか。
 こういうことを、するっと言えてしまうのが、きっと何よりAIの魅力なんだと思う。

 社会的、文化的背景とか、常識的な物事の良し悪しとか、人々の行動を無意識に縛る価値観とかを、へいきでちゃぶ台返しするのだ。
 番組に出ていたマツコは、この意見の言わんとするところを、
「なんかわかる」といい、
「仕事以外にも面白みを見つけろってことなのよ」
と言っていた。また、大越アナウンサーは、
「仕事にやりがいを求めたり、高い報酬をより良いものとしたりといった、成長一点張りのモデルを疑ってみたら?」
といういう解釈を示していた。

 つまり、「仕事でのやりがいや高い報酬」ばかりにプライオリティを置くのではなく、もっと、日々の生活の中で面白いことに目を向けられたらいいんじゃない?、ということだ。それはたとえば余暇の家族旅行だったり、ペットを可愛がることだったり、ご近所さんとのサークル活動だったり、趣味的な生きがいだったりするかもしれない。
 きっとそうすると、個々の人は自分の鎧を脱いで、楽になれるし、多くの人とつながれるし、健康にもなれるってことなんだろう。

 翻って見れば、私自身も、その提言と無縁ではないのかもしれない。昨日のメールも、自分が何も達成していないことへの劣等感とか欠落感とかがあるからだ。そしてそれが、おもに仕事に関連していると考えてしまうとすると、私の焦燥感や自己否定的な気持ちも、同じ根っこがあるんじゃないか?

 それにしても、「仕事を面白がるな」とは、いわゆる一般的社会通念、勤労者、労働者の通常の価値観にサラッと反していて、これこそ、AIの真骨頂じゃないかと思った。
 人間がべたべたに染まっている、過去の因習や心理的、地域的、経験的社会通念や常識、物事の良否や、善悪の判断基準も、すいっと超えていって、その向こうにある、広い広い地平をAIは見せてくれるかもしれない。
 無意識まで深くしみついた、どれほど多くの前提や思い込みに人間が縛られてきたか、AIがどんどん突き崩してくれたら、それは確かに人間の進化に一役買ってくれるかもしれない、そんなふうにこれまた漠然とした夢想を抱くのであった。