のんびりライフの鳩日記

日常の、あれこれ感じたことなどをつづります。(不定期更新)

2022年の2冊目

 いつまでもつかは分からないながらも、今年は読んだ本の記録を残していこうと思う。今年の1冊目は、課題図書だった「誰にみしょとて」(菅浩江著)で、2冊目は、いまさっき読了した「土になる」(坂口恭平著)である。

 

 坂口恭平さんは、「0円ハウス」という自分で家を作って自給自足の生活を実践した人として有名だそうだが、私は全然知らなかった。例のごとく、松村先生の雑記で、割と気に入っているようなことが書かれていたので興味を持った。

 調べてみると、とにかく何でも自分で作る人だ。執筆もするし、絵も描くし、作曲もするし、会社も作る。興味があることはとにかくすぐにやってみて、そしてすごいことにそれがなんでもすぐに形になる。本は30冊以上出版しているし、絵も何百枚と書き、それが結構な値段で売れるし、個展も何度も開かれている。さらに、その片手間(というと失礼かな?)には、自殺を考えている人のための電話相談までやっていて、考えられないぐらいエネルギッシュな人なのだ。

 とはいえ、それらをすべてスイスイ苦も無くこなしてきたかというと、そんなことはなく、本人はずっと躁鬱病を患い、鬱から逃れ、生き続けるために創作をしてきた。創作によって生きのびてきた、という感じなんじゃないかと思う。無尽蔵のエネルギーを楽に使いこなしてきたというより、豊かすぎるエネルギー(と、本人は思ってないと思うけど)の放出先探しで苦労を重ねてきたようにも思う。思いついたら、自分の手を動かして作らなければ気が済まないから何でも取り掛かるけれど、それが持続するかはやってみなければわからない。飽きっぽいこともあって、手を付けては放り出すことも繰り返してきたようだけれど、ふとした思い付きで始めた畑での野菜作りを始めた。それが、彼にとっての覚醒になった。毎日、朝起きて執筆し、畑に行って野菜の世話をし、猫の語り合ったあとは、アトリエに戻り絵を描く。そのルーチンのなかで、山や、雲や、風や、太陽や、虫やとともに生きる植物と一体となって、土に根を張ってぐんぐん伸びていく自分に気づくのだ。そのことが、この1冊の本に書かれている。

 言葉で表現されるのは、言語を介さないノラ猫との心の会話であり、理屈では伝えられない野菜たちとの信頼関係であり、すべてを包み込む土との一体感だ。土とは、一体”感”じゃなくて、一体、だった。畑に住む微生物と野菜と自分とが一つの大きな存在であまねく広がっていることへの確信は、現在という時間枠を越えて過去と未来にしみわたり永遠に広がっている。それがずっと継続されていくことへの喜びに満ちているのだ。

 ”人間にとって、最重要なことは『つくる』ことである”、という著者の考えが、いかに尊い実践で、喜びをもたらすものかを、この本は伝えている。だから、この本を読むと自分も作りたいという気持ちになるし、”つくる”ことへの勇気が湧いてくる。何かを創造すると、いつもその不出来さを嘆かずにはいられない。けれど、”継続することに能力は関係ない。必要なのは、興味だけだ”、とも書かれていて少し気持ちが楽になる。

 とにもかくにも、継続してみよう。継続できなければ、継続できる機会を見つけてみよう。年初、2冊目の読書から。